top of page

セックスにさよならは言わないで~悩みをなくす腟ケアの手引き~

femship事務局

女性医療クリニックLUNAグループ理事長 関口 由紀

 




「ダメ、もう我慢できない・・・・。か、かゆい・・・!!」


当時、男性患者が多い一般泌尿器科のクリニックで勤務していた私は、診察の合間にトイレに駆け込むことがありました一般泌尿器科のクリニックで勤務していた私は、診察の合間にトイレに駆け込むことがありました。腟や外陰のかゆみに、耐えることができなかったからです。外用薬を塗ってもかゆみは取れず、どうしても我慢できないとなれば、しかたなくトイレに入ってかくことしかできませんでした。そうはいっても、腟の内側までかきむしることはできません。ひたすら我慢の日々が続いていました。


2人目の子どもを37歳で産んだ私は、その4年後の41歳で乳がんになり、すぐに女性ホルモンを抑制する治療を受けました。女性ホルモンが、乳がんの進行を速めるからです。その結果、女性ホルモンが減って、強制的に閉経を迎えることになりました。


ホットフラッシュなどの更年期症状はもちろん、尿もれのトラブルもかなりありましたが、何より辛かったのが、腟や外陰のかゆみ。何をするにも集中できず、生きる意欲を失い、どん底の毎日を送っていました。


今、振り返ると、このかゆみは、本書でご紹介する「Genitourinary syndrome of menopause」(閉経関連尿路生殖器症候群)、略して「GSM」という女性特有の病気の典型的な症状だったのです。


でも、女性ホルモンが減ることによっておこるこの病気は、そのころまだ世界でも十分には認知されておらず、女性ホルモンの分泌を抑制した乳がんサバイバーが、シモのかゆみでとても困っているという事実は無視されていました。「なんの治療も受けられないの?一生、腟の不快感を抱いていかなければならないの?女性ホルモン欠乏のカラカラ状態で、一生、生きていかないとならないの?」とさまざまな不安と絶望が押し寄せ、どこにも希望を見出すことができませんでした。


でも、私はそこから一念発起します。「それが年をとるってこと」「閉経したら、もう女性は卒業なのよ」、そんな社会の雰囲気に、絶対にのまれたくなかったのです。


女性として生まれた以上、いくつになっても女性らしく生きるのが当然の権利です。


絶対に、何か方法はあるはず!そう自分に言い聞かせながら、乳がん患者は受けることができない全身のホルモン補充療法以外で、腟や外陰の不快感を減らす治療法はないか、徹底的に探し始めたのです。


 オタク気質でもある私は、海外の文献をあさり、少しでも関連しそうな医学論文や記事があればすべてに目を通し、運動、食生活、サプリメントなど、可能性があると思える治療法があれば、それらも積極的に取り入れていきました。

子育てと仕事の時間をやりくりして、国内外で開かれる「国際女性性機能学会」や「日本性機能学会」にも、毎年、参加しました。そしてついに2014年、待ちに待った瞬間が訪れました。アメリカ・アトランタで開催された国際的な学会で、女性の生殖器や外陰に関する悩みに「GSM」という病名がつけられ、はっきり「治療対象」とされたのです。


 私は、その記念すべき現場に、日本の医師としては、いち早く居合わせることができました。

それ以降、私は全身への女性ホルモン補充だけに頼らないGSM治療法をみずから実践していきました。そのおかげで現在は外陰の不快感はまったくなく、快適な毎日を送ることができています。


 しかし、50代以降の2人に1人が苦しんでいるといわれるGSMなのに、日本ではまだまだ認知が進んでいるとはいえません。GSMは、適切なケアや治療をしていくことで、必ず症状が改善される病気。それにもかかわらず、です。


 この本はかつての私のように苦しみながらも、どうしたら良いのかわからない、あるいは病院で治療を受けても効果がない、という女性に向けて書きました。


 第1章では、GSMがどのような病気なのかを、私の体験とともにご紹介します。


 第2章にはセルフチェックシートを掲載しましたので、ご自身が本当にGSMにあてはまるかどうか、チェックしてください。


 第3章では、GSMの原因である女性ホルモンの欠乏について。さらに女性ホルモンの欠乏によって心身に起こるさまざまな疾患について。続けて、女性の体の中で男性ホルモンがどのような働きをしているかを説明します。また性ホルモン以外のホルモンについてもご紹介します。


 第4章ではGSM改善のために、自分でできるケアについて、第5章では、これまで医療機関で行われてきた治療法についてと、現在おこなわれている新しい治療法について説明します。第6章では、GSMに苦しんだ患者さんの声と、その患者さんに対して行った治療を具体的に紹介します。


 私たちはこれから人生100年時代を迎えます。「年をとったからしかたがない」「女性ホルモンが減ったから女性を卒業」なんていっていないで、女性としての人生を輝かせるために、どうか本書を役立ててください。


 今も、そしてこれからも、ずっと、楽しく、美しく、元気に生きていきましょう!



著者について


女性医療クリニックLUNAグループ

理事長 関口 由紀

医学博士 日本泌尿器科学会専門医・指導医









閲覧数:180回0件のコメント

最新記事

すべて表示

Comments


お問い合わせ

送信ありがとうございました

日本女性財団

女性の心身の健康, 女性支援, Well-being

© 2021 by #femship — Japan Women Foundation. 

bottom of page